っていうか国試の勉強と全然違う!
時間は少しできたけど,
どうやって勉強したら良いかわからない!
勉強方法は研修医あるあるだよね.
ここでは
①一般的な勉強方法
②より効率重視の勉強方法
を教えよう!
効率よく勉強するには
「勉強時間を確保するには」というところで述べたように,皆さんにまず必要なのは時間です.
日々の業務で忙しいと思いますが,勉強時間が確保でき効率よく勉強できれば,日々の臨床がもっと楽しくなるはず.
さらに,医師になって勉強することが増えると,
・勉強をどのようにすれば良いかわからない
・ある疑問を解決してくれる本・資料の探し方がわからない
という声をよく聞きます.
上級医・指導医がすぐに教えてくれるのは,元々知識があるかすぐに調べて答えが出せるかのどちらかです.
前者は研修医の間は難しいため,後者についてお教えしようと思います.
その上で,効率よく勉強する方法をお教えします.
さて!研修開始日に出勤したうさ研修医みなさんどんなオリエンテーションでしたか?うさ研修医今日から研修医生活が始まる...ドキドキ初出勤,仕事って緊張するな...DYはーい.それでは[…]
まずは,医学文献の分類から
まず,医学文献の分類について.
医師になると明確な目標が専門医試験以外ないため,日々の勉強に苦労します.
たくさんある医学文献の中で,どれを参考にすればよいかの前に本の分類についてお教えします.
学生時代に購入した医学書は,学校指定の教科書/参考書か国試対策の本だと思います.
そもそも私たちの業界では以下のような本の分類がされています.
医学文献の分類
※あくまでイメージです.厳密な分類とは外れますが,理解しやすいようにあえてこのような形にしました.
イメージにするとわかりやすいですが,それぞれについて解説していきます.
教科書
言わずと知れた医学書の中で最もよくまとまった本です.
長所 | 短所 |
知識は最も多く,深く追究されている 情報の質が担保されている | 値段が高い 分厚く持ち歩くのは不適 最新情報が載るまで時間がかかる あくまで調べ物 |
<例>
救急の分野では,Rosen’s Emergency Medicineなど
感染症の分野では,Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseasesやシュロスバーグの臨床感染症学など
二次文献
二次資料・データベースとも言われます
教科書ほど完全にまとまったものではないですが,更新がされるため最新の知見は入りやすいです.
主に,レビューや原著論文をまとめたものとなります.
長所 | 短所 |
病態整理などの知識がよくまとまっている やや稀な疾患・病態でも解説されている ほとんどの情報の質が担保されている | 英語が苦手な人には少し苦労する お金がかかるものもある |
<例>お勧め順から
皆さん聞いたことのある世界No.1のデータベース.有料ですが病院が契約していれば使わない手はありません.
個人契約では年間約50000円,研修医・レジデントであれば年間約20000円で使えます.
世界No.1のUpToDateとの違いは,「箇条書き」で記載されていること.病院契約されているところもあります.
情報量はUpToDateに軍配が上がるが,レイアウトや箇条書きである点でこちらを好む先生も.
個人契約では年間約40000円,研修医であれば年間約30000円で使えます.
英語サイトであるが,会員登録すれば無料で使用できる優れもの.
上2つほどではないが情報量は多めであり,無料の範囲内では非常に助かります.
無料,日本語版ありの医学事典.
情報量はやや少なめ,更新頻度も多いとは言えないが,サクッと検索するときには有用.
日本版UpToDateで日本の専門家が監修し書き上げた文献集.
情報の質は作者に委ねられるため質の担保が微妙.個人契約であれば,年間約15000円.
レビュー
論文を多数読み解いて分析しまとめた,まとめ論文のことです.
長所 | 短所 |
教科書に載る前の最新の情報 Pubmedで検索でき,ほとんど無料 よくある疾患など,定期的に更新される 「読み物」でも「調べ物」としても重宝する | 英語が苦手な人には少し苦労する 情報の質が担保されているか,自分で判断しなければならない
|
<例>
New England Journal of Medicineのreview
各ジャーナルにレビューはありますが,NEJMのreviewは質が良くがわかりやすいです.
(原著)論文
症例発表や比較研究など,学生時代に実習などで読み解いた論文のことです.
長所 | 短所 |
上記のレビュー・教科書に載らないレベルの臨床的疑問や最新の情報について 発表されていることがあるPubmedで検索でき,ほとんど無料で閲覧できる | 英語が苦手な人には少し苦労する 情報の質が担保されているか,自分で判断しなければならない 読み物ではなく,調べ物専用 |
<例>
少し難しいので具体的に,
2020年に流行した新型コロナウイルス感染症についても,最初は論文発表による症例報告からでした.
その後情報が集まり,今は様々なレビューが出ています(臨床経過について,治療について,集中治療管理について,ワクチンについてなど).
数年後にはこれらの情報の質について吟味され,教科書に載るようになるでしょう.
ガイドライン
ある疾患や病態について,最新の情報も含めて解説されている文献です.
長所 | 短所 |
情報の質がほぼ担保されている (そのようにガイドラインに記載しなければならない)海外のほとんどのガイドラインは無料で閲覧が可能 | 日本の学会のガイドラインは有料のものもあり, 質が担保されているか微妙なものもある読み物とはならない |
<例>
救急では,心肺停止に関する日本の学会のガイドラインはJRC(日本蘇生協議会)が出しています.
海外の学会のガイドライン(ヨーロッパではERC・アメリカはAHA)も出しており,定期的に更新されています.
商業誌/雑誌
いわゆる本屋さんに売っているような,手に取りやすくわかりやすく書かれた本です.
ここの中でどれ読めば良いの?という疑問に関しては,各分野別にまとめましたのでご参照ください.
長所 | 短所 |
読者目線で書かれている (研修医のための〜や非専門医のための〜など)「読み物」にもなるし「調べ物」にもなる持ち歩くのに適した大きさの本もある | 教科書ほどではないが,値段が高いものが多い 情報の質の担保がされていないことがある |
<例>
皆さんが持っている本のほとんどは「商業誌」です.
シリーズものも多く,「ただいま診断中!」「考え方,使い方」「999の謎」などたくさんあります.
(シリーズものは響きが良いため,1冊買って読んで気にいると他の本も欲しくなりますが,著者は別の人になるため必ず試し読みしてから買いましょう)
医学文献で効率良く臨床的疑問を解決するには?【これが一般的】
本題まで時間かけすぎ!
ここからが本題です
どの疑問に対して,どの文献からさらうの?ということについて,具体歴な例を挙げて説明していきます.
胆管炎の病態は?治療は?
感染症の商業誌の中でも,総論と各疾患についてがのっている本をお勧めします
例として,「レジテントのための感染症診療マニュアル」の「胆管炎」の項目を見れば1時間で表面をさらえます(この本はもはや商業誌よりも教科書になりつつあります).
「市中感染症の考え方と進め方:IDATEN感染症セミナー実況中継」「感染症レジテントマニュアル」なども記載されています.
ただし,効率重視のため,その治療の根拠などは詳しく書かれていない可能性があります.
追加でガイドラインを読めば,比較的新しい情報も手に入ります.
上に加えて,感染症の教科書やガイドライン・レビューを読み解きましょう.
(胆管炎に対するサイトカインの話など深い深い話があります)
ガイドラインは項目別になっており読みやすいためお勧めです.
前もあったし一般化できないかな?
これもよくある話です.病棟で良くある訴えについて,あえて書かれている本は少ないです(便秘・不眠など).
病棟のよくある訴えをまとめた本を読み,調べることをお勧めします.
例として,「内科レジテントの鉄則」ですと「不眠・せん妄」の項目があります.
他にも「レジデントノート 2019年1月 せん妄への不安、解決します! 」は本そのもので特集されておりわかりやすいです.
「総合内科病棟マニュアル」や「内科病棟・ERトラブルシューティング」は病棟で起こり得るすべてのことは書いてありますが,一つ一つの項目は詳しくありません.
上に加えて,内科や精神科の教科書を読んでも良いかもしれません.時間があればですが...
末梢静脈路の血栓が原因だった!
抗凝固療法の適応はあるのかな?
これについて調べてみよう!
残念ながら,このような「一般化がまだされていない,まれな病態や疾患」は効率重視では解決がなかなか難しいところです.
DYは英語が苦手でPubmedは最後に使用します.意地でも日本語で調べ解決できるのであればそれで越したことはないからです.
しかし,教科書や商業誌に載っていなさそうな臨床的疑問は潔く諦めます.
(調べる時間が無駄なため)
このような時は,レビューがないかまず調べ,なければ論文などを探し読み解いていきます.
Pubmedの使い方や文献の批判的吟味については”沼”のためこのブログですべて解説することはできません(すみません).
まずは上2つの疑問を速やかに解決し,自分のものにすることを目指しましょう!
救急外来に関わることはたくさんの商業誌があるため,教科書を引いてくることは専門医など指導医にならない限りあまりないかと思います.
これは皆さんよくやっているかとは思いますが,いわゆる救急外来で症候別に対応する時に必要な知識などが書かれている本です.
たくさんあるので本だけ紹介します.
「研修医 当直御法度」は持ち歩きしやすく,ほぼすべての救急初期対応を網羅しています.
「救急外来 ただいま診断中!」や「卒後15年目の総合内科の診断術」は持ち歩きにくいですが,根拠がしっかり買いてありあとで復習するときなどに便利です.
救急外来でのお勧めの本はこちら
うさぎ研修医救急研修忙しい...上級医の先生も忙しくて,なかなかじっくり指導してもらえないしなあ...自分で勉強できる良い本ってないかな?医学生・研修医の皆さん,救急外来は楽しいですか?[…]
手技の本も商業誌で十分です.
もっと詳しく動画で勉強したい!という方は,NEJM Videos In Clinical Medicineもお勧めです(救急の手技はほぼすべてレビュー+動画があります).
手技については,シミュレーションの方が大事です.
自分の病院でシミュレーションキットがあるならば,それを用いて勉強しても良いでしょう.
医学書以外から臨床的疑問を解決する【より効率的に】
医学書を見る方法はなんとなくわかった.けどもっと効率良く日本語で勉強したい!というあなた向け
(王道からは外れるのですが,効率は最も良いかもしれません)
それは,ブログ記事などでの他の先生がまとめている情報を参照させてもらうことです
具体的に以下のサイトがあり,私も良くお世話になっています.
総合内科の内容について,最新情報を含めてまとめられています.
論文の要約などしていただいており,とてもありがたいです.
JHospitalist Networkが運営する,各施設から投稿されたClinical questionやJournal Clubが紹介されています.
臨床的疑問の調べ方から,論文の批判的吟味を「型」通り展開してくださっています.
教科書やレビューの要約から,レビューに載っていないような臨床的疑問もありますのでお勧めです.
亀田総合病院 感染症科の先生方が作成された感染症のガイドラインです.
ローカルファクターなどはありますが,各感染症の考え方や診断方法・治療などがPDF数ページでまとめられており,わかりやすいです.
以上数サイトあげさせていただきました(各先生方いつも勝手にお世話になっております).
もっとたくさんあり,以下でまとめておりますのでこちらもご覧ください.
うさぎ研修医本で調べても出てこないー!どこに書いてあるのかもわからないー!情報がたくさんのっているまとめサイト的なものはないかな?手軽に調べられて勉強できるところはないかな?DYうさぎ先生[…]
勉強し,記録する方法
結局裏技的なものはないんだ…
これまで効率良く勉強する方法を書かせていただきました.
(超裏技!みたいなものを期待していればすみません)
次は,勉強してそれを吸収,アウトプットする方法です.
医師になってからは試験が少なくなり,明確な目標が立ちにくくなります(いつまでにこの試験を目標を持って勉強しなきゃ!が減ります).
学生時代から日々勉強していた皆さんからしたら,医師になって勉強したことはあまり頭に残らなくなります.
(繰り返し同じ診療をしていると身につきますが,歳をとると忘れていくことも多いです)
それを防ぐため,今まで勉強したことをなるべく記録することをお勧めします.
その方法でお勧めしたいのは,Evernoteを利用した記録です.
Evernoteのまとめ方についてはこちら
うさぎ研修医研修医になってからの方が勉強量が多い気がする...せっかく勉強したことをまとめたい!ぱんだ研修医Evernote使ってるんだけどしっくりこない...DYあるある〜![…]
うさぎ研修医DY先生!この前教わったEvernoteの使い方でノートは効率よくできるけど,せっかく作ったノートに辿り着かないです!DYEvernoteで作っている人たちみんな悩むところだよね.[…]
Evernoteは非常に便利です.記事作成はどこでもでき,オフラインでも内容が確認できます.
ここでは簡単に触れましたが,まとめ方についてはこれらの記事をぜひ読んでください!