救急外来の医学書おすすめ33冊
【2021年度最新版】

  • 2021年2月19日
  • 2021年7月18日
  • 医学書
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うさぎ研修医
救急研修忙しい…
上級医の先生も忙しくて,なかなかじっくり指導してもらえないしなあ…
自分で勉強できる良い本ってないかな?

医学生・研修医の皆さん,救急外来は楽しいですか?

DYは初期研修の時に救急診療が楽しいと思い,救急医を目指すきっかけになりました.

初期研修の期間中には救急外来が必須であり,救急当直も勤しんでおられると思います.

そんな中,指導医から直接指導をもらうことも多いと思いますが,

自分で勉強するにはどの本が良いの?という疑問にお答えします.

紹介する本は全て商業誌であり,私が読んだ上での書評です.

DY
必読本からさらに深く勉強したい方に向けて計33冊紹介します.

目次が長いので必要であれば閉じてくださいね.

目次

救急外来で有用な医学書のジャンル

主に,3つに分けられます.

  1. ほぼ全ての症候別で書かれ,初期対応について重点的に書かれた総論的な本
  2. 頻度の多い症候別に書かれ,各根拠について詳しく書かれた一部総論/一部各論の本
  3. ある分野に特化した,各論の本(整形外科・処置・検査など)

があり,それぞれ皆さんがどれを求めるかによって本の種類が変わります.

DYは救急外来に①と③の本を持っていき,後で勉強するときに②や③の本を使うという感じでした.

下ではお勧め度とともに解説しております.

救急外来関連の本を買うときは①〜③を意識して同じような系統の本で被らないようにしましょう.

必読・必携本【6冊】

研修医当直御法度第6版

お勧め度

皆さんご存知の”赤本”です.

医師で赤本といえば,感染症のRed bookとこちらの本ですね.

福井大学の林先生が,「簡潔に」かつ「ほぼ全ての救急外来の主訴別対応」についてまとめてあります.

ポケットにもぎりぎり入る大きさで初期対応についてパッと参照できるのはありがたいですね.

ただし,理論や生理学についての詳細までは記載されていないため,後で勉強するのに役立つ本とあわせて購入してください.

お勧め度が★4になっているのは,マイナーな主訴などまで盛り込んでいるため,内科外科救急のみ対応する医療機関の医師には少し多めのためです.

救急外来ただいま診断中!

お勧め度

こちらも必携でしょう.

少し分厚く,値段もお高めですがこれさえあれば救急外来の初期対応は自信を持ってできると思われます.

頻度の多い症候別にまとめられ,さらにそこからのアプローチとその間に起きる臨床的疑問点について根拠を交えて生理学や診断基準・スコアまできちんと記載されています.

ただし,救急の本でよくあるのですが,著者のエキスパートオピニオンの部分も入っているため,これだけを鵜呑みにするのは危険です.

また,内科の主訴が多く全ての主訴・症候に対しては載っていないため注意が必要です(ここは赤本が勝ります).

感染症における抗菌薬についても少し疑問に思うところもあるため,他の本などとも合わせて勉強しましょう.

卒後15年目総合内科医の診断術

お勧め度

「救急外来ただいま診断中!」と好みが別れますが,扱っている疾患・症候は似ています.

こちらは題名から救急外来を想起しませんが,場所別での主訴とアプローチの仕方について解説されています.

救急外来編・総合内科外来編・入院診療編など分けられており,救急外来以外の項目でも救急外来で役立つ情報が載っています.

普段の外来研修や入院診療でもこちらの本で事足りますが,持ち歩くには分厚く外傷については記載がない(内科医の本のため)ため,★4としました.

当直ハンドブック

お勧め度

上の”赤本”と良い勝負をするほど網羅的な本が出版されました.

救急外来で出会うほぼ全ての「症候別」と,「疾患」に対して数ページで簡潔にまとめられています.

診察のポイントから検査の提案,入院適応と帰宅時の指示まで書かれており,救急外来で診療する時に参考になること間違いなしです.

500ページあり分厚いですが,価格もそこまで高くないため★4としました.

開講!神戸中央市民病院ER+ICUスクール:ER医+ICU医の頭の中をのぞいてみよう

お勧め度

厚生労働省による全国救命救急センター評価で毎年1位を獲得している神戸中央市民病院救急部の先生方で作られたER・ICUの本です.

ほとんどの症候別に「考え方」と「初期対応」について簡潔に書かれています.

同じ主訴・症候でも色々な施設で考え方が少し異なるため,違いを勉強するには良い本だと思います.

ただし,簡潔な分ボリュームに欠けており,詳細な根拠など勉強したい人には不向きのため★3としました.

京都ERポケットブック

お勧め度

洛和会音羽病院救命センターが発行した救急外来における初期対応の考え方・アプローチの本です.

初期対応のフローや鑑別疾患が書かれており,初期対応のみに限れば神戸中央市民病院の本と変わりません.

デザインや施設による考え方の差異がある程度です.お勧め度は上と同じくボリュームにはかけます.

 

後で勉強するのに役立つ本【8冊】

ステップビヨンドレジテントシリーズ

お勧め度

赤本の林先生がレジデントノートで連載しているシリーズを本にしたもの.

林先生節で根拠に基づいた診察・検査・クライテリア・診断などについて書かれています.

Step1が2017年に改訂され,Step7が2014年に出版されこれらは比較的新しい情報もありますが,他の本の情報が少し古くなっています.

ただし,身体診察や検査の根拠についてはどのシリーズもわかりやすく解説されているため,目を通すことをお勧めします

全シリーズ購入にはお金がかかること,情報が古い部分が増えてきているため★3です.

考えるERーサムライプラクティスー第2版

お勧め度

題名の通り,ER型救急外来の診療プロセスにおける,”その根拠について考える”をテーマに外的妥当性についても踏み込んである本です.

よくあるクライテリアやプレディクションルールについて,妥当性についても根拠論文から引っ張って吟味されています.

さらに,症例別のピットフォールと臨床的疑問点についても解説されています(稀な症例から頻度の高い症例まで様々です).

第2版となり,根拠論文などが新しくなったことで100ページほど増えました.

この本を読めば,なんとなくではなく「きちんとした根拠」を持って診療でき,自信を持って対応できるようになるでしょう.

出会う頻度の多い疾患・ルールなどがあり研修医にもわかりやすく書いてあり★4としました.

救急外来,ここだけの話

救急外来,ここだけの話
created by Rinker

お勧め度

ERにおける,各疾患・病態に対する『エキスパートならこうする』といった一歩踏み込んだ本です.

最新のエビデンスに基づいてそれぞれの疑問に対しての回答が書かれ,一般の内科外科領域からマイナー・中毒までジャンルも幅広くあります.

疾患や病態のアプローチ方法もありますが,初学者向けというよりさらに踏み込んで勉強したい!という方に最適です.

個人的にはお勧めですが,最初に手に取る本ではないため,★3としました.

ER•ICU診療を深めるー救急•集中治療医の頭の中Ver.2ー

お勧め度

ERとICU診療においては少し切り口が異なる本です.

症候別や各論ではなく,頻度の多い症候や疾患に対しての考え方について深く書かれた本です.

例えば,救急外来の妊娠反応検査についても必要性についてよりも,どのように対応するか,自費診療となるのか?など少し別の見方で解説されています.

救急診療に少し慣れた段階で手にすると,さらに理解が深まる本のためお勧めですが,初学者向けではないため★3としました.

研修医当直御法度百例帖第2版

お勧め度

症例ベースで見落としやすい点について解説されています.

本自体は古くなりましたが,救急外来のピットフォールは新しくなるものではないため,今でも読む価値が十分にある本です.

この症候/主訴できたときの,見落としやすい点/考え方についてまとまっています.

動きながら考える!内科救急診療のロジック

お勧め度

内科救急の診療を,症例ベースに診察前の準備段階から初期対応・診断についてまでの解説がされています.

まさに,「指導医の頭の中」という診療の一連の流れを追いかけることができて,症例を見ていなくても(見ることがない症例でも)考え方がしっくり入ってくる流れです.

総合内科の目線ではこのような考え方の本は面白く,勉強になります.

ただし,”内科救急に特化している”点と”救急で多数の患者を診療しながら1分1秒を争っている中でここまで丁寧に考えられるか?”という点から,マルチタスクの中脊髄反射で動かないといけない時もある救急医として,★2としました.

悪い意味ではなく,思考過程や病態生理については丁寧に書かれているので,後から勉強するとしての本としては良いと思います.

内科病棟/ERトラブルシューティング

お勧め度

症候別からのアプローチ方法に加えて,鑑別疾患と病歴・身体所見感度特異度などにまで言及しており,症候別の中ではかなり掘り下げて書いてある本です.

蘇生(気道・循環管理など)についてはやや文章での説明が多いため,好みが分かれるかもしれません.

病棟対応についても記載があるため,内科を研修している・専攻している若手医師には有難い本です.

症候別の掘り下げ方が総合内科の領域にまで達しており(救急外来でそこまでの鑑別は不要),救急外来/ERで初期対応をする際に限れば少しボリュームオーバーであり,★3としました.

ER救急999の謎

お勧め度

”999の謎”では感染症・集中治療が出ていましたが,ER救急編でも出版されました.ER・救急外来での謎が一問一答で回答解説されています.

他の本で勉強しながら,隙間の知識や追加の知見を得たいという人にはお勧めです(少なくとも初期研修を終えてからが良いかも).

答えのない質問に対しても,意見を含めて回答されているため面白いです.ただし症候別のアプローチ法など細かい言及はない分初学者からお勧めできないので★3です.

 

救急外来で必要な検査・処置についての本【14冊】

<外傷> JATEC 外傷初期診療ガイドライン第6版

お勧め度

外傷の初期診療について網羅的に記載されており,外傷診療に携わる医師は必携です.

特に,「外傷を普段見慣れていない救急の医師が,体系立てて学ぶことができる」ということがお勧めの理由です.

何を・どこをどの順番に見ていくかが記載されており,さらに各論(部位別外傷)に対しても初期診療で最小限必要な部分が書いてあります.

デザインは見やすく,値段は高いですが★4としました.

JATECコースを受講するにはこの本が必須であり,この本のシリアルコードを入力しなければ受講ができないようになっています.

<外傷> ERの創傷

お勧め度

救急外来で外傷を見る際に必須なのは「縫合」です.

この本は創傷を見たときの対応について縫合のみならず処置について詳しく書かれた本です.

少し古いですが,絵がわかりやすいためDYが若手医師に指導するときによく参照しています.

救急外来で外傷診療に携わる研修医や若手外科医には一見の価値があり★4です.

<検査> 心電図の読み方 パーフェクトマニュアル

お勧め度

初期研修医の間の心電図の本はこの本で十分かと思います.

ただし,最初は「そもそも異常かどうか」を見極めることが難しいため,「ある異常に対してのアプローチ方法」が書いてあるこの本は少し難しいかもしれません.

救急外来には少し不向きのため,★2としました.

<検査>心電図ハンター 心電図×非循環器

お勧め度

こちらは症候別の心電図を見たときに,どう対応するか?をテーマにした非循環器内科向けの本です.

「異常の見つけ方」について解説とともに書かれており,「胸痛」から「動悸・不整脈」などシリーズで出版されています.

頻度の多い心電図異常が問題形式で挙げられており,症例別で解説されています.

心電図は「数を多くこなして吸収する」部分が多いため,このような本をきっかけに心電図読影への苦手意識がなくなればなと思います.

<処置・手技> 見える!できる! 気管挿管

お勧め度

気管挿管については麻酔科での研修が一番勉強になると思います.

救急外来で挿管する時は切迫しているときなので,心肺停止患者以外で手技ができる機会は少ないかもしれません.

この本は画像が圧倒的に多く,動画もついているため気管挿管の手技では最もわかりやすいです.

最近の主流であるビデオ喉頭鏡についても解説画像が多く解説されています.

一度本で勉強してみたい方へはお勧めですが,あえて買わなくても良い本なので★3としました.

<処置・手技> あてて見るだけ!劇的!救急エコー塾

お勧め度

救急外来のみならず,診療におけるエコーの”重み”が進化し続けています.

検査者の手技と目に委ねられるため,日々勉強し実践して養うことが重要です.

その中で,救急外来でのエコーを網羅的に解説されお値段的にもお勧めなのはこちらの本です.

ただし,古くなってしまいあまりしない手技についても言及されていること,正常像など詳しい解説は少なめであることから★3です.

<処置・手技> 完璧マスター!救急エコー

お勧め度

こちらは症例別にエコー像と診断をえたCT画像まで載せてあり,”この疾患ならこのように見える”という点でわかりやすくまとまっています.

臓器別・疾患別に深く書かれておりみやすいのですが,上の”あてて見るだけ!劇的!救急エコー塾”よりは少し幅が狭いため,上と同じく★3としました.

<薬剤> ICU/CCUの薬の考え方,使い方 ver.2

お勧め度

題名は救急外来と関係ないですが,初期研修で使用する救急外来・集中治療領域の薬はこの本で事足りるくらい多数の薬剤について解説されています.

本のタイトル通り,薬に対しての使い方だけではなく生理学にまで言及されています(薬のみならず人工呼吸器についても書かれています)

救急外来や集中治療で薬剤を使用する場合,施設で規定の濃度があれば良いのですがない場合など,自分でどのように使用すれば良いか悩んだ場合にも組成が参照できるため便利です.

あえて他の薬の本を進める余地がないため,★5としました.

<整形外科> 救急・当直で必ず役立つ! 骨折の画像診断 改訂版

お勧め度

各部位の骨折の分類とその対応についてわかりやすく書かれています.

下の”骨折・脱臼・捻挫 基本手技バイブル”との違いは,首から上の外傷についても記載があることです.

ただし,骨折が分かってからの分類など,外傷に慣れていない医師が骨折を探すという点ではお勧め度が下がり,★3です.

<整形外科> 豊富な写真でわかる! 骨折・脱臼・捻挫 基本手技バイブル

お勧め度

こちらも各部位の骨折の分類とその対応についてわかりやすく書かれています.本がA4版であるため,写真が大きくみやすいのが特徴です.

骨折や外傷後の処置についても書かれており,捻挫の記載があるのは上で紹介している”骨折の画像診断 改訂版”との違いです.

上と同じ理由で★3です.この2冊の本の違いは書いた通りですが,非整形外科医としてはどちらでも良いと思われます.

<整形外科> 骨折ハンター レントゲン×非整形外科医

お勧め度

最近になり,「外傷エピソードからはこの骨折が考えられます」といった症候別の外傷本が増えてきました.こちらはその種類の本です.

非整形外科医が外傷を見たときに,注意して診察するポイントやレントゲンで見るべき部位について解説されています.

頻度の多い外傷に絞ってあり,診断編と整復・固定編と分けられているためわかりやすいです.

初学者や非専門医向けの本であり★4としました.

<整形外科> フローチャート整形外科診断

お勧め度

こちらは主訴からのアプローチ方法がフローチャート形式になっており,非専門医でもわかりやすく解説されています.

専門医がいない救急外来で自分で戦うために,というテーマの本ですが,解剖から考え方,初期対応までシームレスに書かれており非常に明快です.

画像重視ではないですが,症候・主訴については頻度の多いものを中心にわかりやすく取り上げられているため,★4としました.

<整形外科> 救急整形外傷レジデントマニュアル 第2版

お勧め度

こちらはポケットに入るサイズであり,非専門医向けに書かれたマニュアルです.

骨折の分類ではなく,受傷した部位に起きる骨折をそれぞれ別で書かれています.

写真重視ではないですが,初期対応と専門医に繋げるタイミングなど非専門医の目線で書かれた本です.

夜間休日など,「専門医がいない状況」では非常に役立つ本であり救急外来に持ち歩ける大きさのため★4としました.

<マイナー> マイナーエマージェンシー

お勧め度

これはERなど,様々な疾患・主訴を見る救急外来で働く若手医師向けの本です.

鼻腔異物・魚骨異物・釣り針が皮膚に刺さった・コンタクトレンズがずれた・顎が外れたなど,「よくありそうだけどどう対応したら良いの?」といったマイナーな主訴に対してそれぞれ解説されています.

そのような患者は救急外来に来ない!という施設で働いている医師は不要ですので★3です.

しかも持っているだけでも分厚く思いため,電子版での購入をお勧めします.

 

さらに深く勉強したい人のために【5冊】

<検査> 竜馬先生の血液ガス白熱講義150分

お勧め度

血液ガスの解釈はほとんど決まったアプローチがあり,それを繰り返すだけです.

そのアプローチ方法について,生理学からわかりやすく解説されているのがこの本です.

学生から研修医向けの本であり,血液ガスについてはこの1冊で十分よくわかると思います.

<処置> Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸器管理

お勧め度

人工呼吸器について全くわからない!という人向けの,病態と生理学から考える人工呼吸器の本です.

発行が2015年であり,呼吸器のモードについての情報が古くなりましたが,人工呼吸器に対する基本の考え方はこの本がわかりやすいため★3です.

<処置> こういうことだったのか!!NPPV

お勧め度

NPPV(非侵襲的陽圧管理)は人工呼吸器の本に記載はありますが,NPPVに特化した本は少ないです.

こちらの本は生理学からわかりやすくNPPVについて解説されていますが,最初からかなり踏み込んで書かれており研修医がいきなり買う本ではないため,★2としました.

<処置> こういうことだったのか!!酸素療法

お勧め度

こちらは酸素療法に特化した本です.病院内で最も使われる薬である「酸素」について,投与方法別に原理が書かれています.

日頃の診療で「酸素投与!」となる上で,なぜこのマスク?であったりこの器具の原理は?など詳しく解説されています.

この本を読めば,原理を知った上で酸素投与が自信を持ってできるようになります

<女性診療>女性の救急外来ただいま診断中!

お勧め度

題名の通り,女性を救急外来で対応する際のポイントについて書かれた本です.

もちろん内容は産婦人科関連が中心であるため,施設として産婦人科を診療しない救急外来であればあまり有用ではないかもしれません.

ER型救急など産婦人科も初期対応する場合はこの本で女性の診療に自信が付きます.

救急外来のみならず内科外来や産婦人科研修でも役に立つ本ですが,必要な人が分かれる本でもあるため★2としました.

まとめ

いかがでしたか?

救急外来で役に立つ本として33冊紹介しました.

同じ系統の本もあるため,全て買う必要はありません.試し読みをしてデザインやわかりやすさなど自分にしっくりくる本に出会えればと思います.

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