初期研修2年間を効率よく,卒なくこなすための心構え【研修医必見】

さて!研修開始日に出勤したうさ研修医
みなさんどんなオリエンテーションでしたか?
うさ研修医
今日から研修医生活が始まる...ドキドキ
初出勤,仕事って緊張するな...
DY
はーい.それではオリエンテーションを始めまーす
机の上に置いてある資料を見てくださーい
まず事務手続きからでーす
うさ研修医
こんなに資料あるの!?
事務手続きいっぱいあるな...
DY
次は院長のお言葉でーす
DY
次は医療安全研修でーす
その後に勤務についての事務からのお話がありまーす
終わったら資料出してくださいねー
うさ研修医
zzz…

初日のオリエンテーションから寝る猛者はなかなかいないと思いますが,オリエンテーションってつまらないですよね...

わかります.DYもつまらないオリエンテーションが嫌で自分の病院のオリエンテーションを改革するくらい口出ししました.

みなさんの病院のやり方があるため,それを否定するものではないですが,ここで改めて研修医の心構えを記事にしました.

働き始めて大変かと思いますが,上級医として日々思うことを簡潔に言語化してまとめました.

DY
これを心がければ,研修生活の最初が楽になる’かも’しれない!

研修医になってからは色々大変!

うさぎ研修医
やることも覚えないといけないこともいっぱいありすぎて大変!
DY
周りから印象良くみられて卒なく研修をこなす方法を教えよう!

国家試験を終え,研修医として働き始めるぞ!(もしくは働きはじめたぞ!)と意気込んでいると思います.

4月の最初はオリエンテーションがあり,事務的な手続き,電子カルテの使い方,医療安全研修など病院によって様々あるでしょう.

いざ研修開始!日々の業務を始めたが,覚えること・やることが多い!というのはみんな思うところです.

ここではいかに自分が疲弊せず,周りからの印象が良くなり研修を卒なくこなす”コツ”をお教えしましょう.

社会人としてのマナー

うさぎ研修医
え,こんな当たり前のことから?

当たり前すぎて「え?」となるでしょうが,あえて書かせてもらいます.

「自分は社会人としてのマナーはわきまえているよ!」という方は読み飛ばしてください.

そうでない方は一度読み通してみてください.

初期研修医のオリエンテーションではあえて社会人としてのマナー講習などありません

(最近は病院によって「接遇講習」などがあるそうですよ).

今までの学生時代,アルバイトや部活動で得た先輩後輩に対するマナーなどから発展させていることが多いと思います.

今一度改めて社会人としてのマナーを確認ください.

簡単なことです,それぞれ小さなことを全てきちんとやるだけで周りから見るあなたの印象はすごく良くなりますよ!

挨拶

毎日の挨拶は職員同士ですると思います(職場全体の雰囲気向上につながりますし).

その上で,研修開始・終了時の上司とスタッフへの挨拶は必須ですので,忘れないようにしましょう.

順番として,

(1)医師(研修する科の部長・教授など偉い人から順番にします)

(2)研修する科の入院病棟の病棟師長や,外来師長

(3)その他(採血や超音波・微生物検査など,研修中に出入り検査部門の担当者)

の順ですが,全て自分のみですることは大変です(場所がわからないなどストレスがかかります).

そのため,研修開始してから担当についてくれる指導医の先生(若手が多いと思います)にお願いしましょう!

「先生,部長など他の先生や病棟師長にも挨拶したいのですが,どちらにいますでしょうか?」と聞くだけで案内してくれたりするはず.

その部門のルールはあるので,「挨拶いらないよ〜」であったり「カンファレンスの時にまとめてしようか」など風習に従いましょう.

自分から言うことで印象は良くなりますよ!

時間を守る(集合時間・提出物)

これも当たり前すぎますが,「医師は時間を守らない」というのは昔から言われています.

これは,(お医者さんはが忙しいから)というイメージに引っ張られていると思いますが,

「(他から見て)あの先生は忙しくなさそうなのになんで遅いの?」であったり

「他の先生は間に合っているのにあの先生はよく遅れる」という悪いイメージを持たれかねません.

(当たり前ですが)時間を守ることは最低限のマナーです.

集合時間・勤務時間だけではなく,提出物の期限を守ることも同じですので,もらった書類はその日中に仕上げる(記入を始める)ようにしましょう.

特に,事務処理(書類作成)を早く行うと自分の時間(勉強・プライベート)ができ,他の部門からの印象も良くなり,自分が困った時に相談に乗ってくれやすくなるので一石三鳥ですよ.

(まれですが,事務仕事を一切せずに勉強に専念する先生もいますが,事務の立場から見て印象は最悪です.円滑に勤務するためにも,提出物の期限は守りましょう)

報告・連絡・相談を

ここは最も重要です.医師である以上,人の命を預かるためこれらのいずれかが欠けることで患者さんを危険にさらすことがあります.

特に,「自分で処理できる案件かどうか」を最初に見極めることが重要です.

具体的には,病棟などから担当患者の件で電話がかかり,それが自分だけで処理できるのか?と悩む時です.

自分で処理できる内容であれば処理し,(上級医へ必要であれば)その後報告という形ができるまでは,自分での根拠のない判断は非常に危険です.

研修に慣れるまで(少なくとも最初1〜2週間)は全て上級医へ報告・相談してから動くようにしましょう.

上級医も「いちいち報告いいよ」という人もいますが,初期研修中の診療における責任は全て上級医がとるため,報告しておいた方が無難でしょう.

自分が研修に慣れ,上級医との信頼関係ができれば(なかなか目に見えるものではないですが)相談と報告は不要です.

ここで最も重要なのは,「裏付けなのない医療行為(指示など)はしない」ということです.

自分自身・身の回りをきれいに

これも当たり前のことですが,自分の身だしなみと机などの身の回りはきれいにしましょう.

提出物を失くした,患者の資料・データを失くしたというのは病院の問題になりかねません.

机をきれいにする方法などはここでは触れません.

丁寧なコミュニケーション

これは報告・連絡・相談にも関わる重要な部分です.

自分のわからないことや相手のわからないことへの対応におけるコミュニケーションは非常に重要です.

(要は,相手を不快にしない対応をしましょうということです)

報告など,自分から話す時には結論を先に!

相手からの報告や上級医からの指導を受ける時にはメモを取る(「聴く」姿勢が大切です)!

これが最低限と思います.

他にも,お辞儀の角度や名刺交換・敬語の表現方法・メールマナーなどたくさんありますがここでは省略します(本題ではないため).

細かいことを知りたいあなたは,検索サイトで「社会人 マナー」として調べてみてください!

うさぎ研修医
ここまでって社会人として当たり前のことで私はできるんですけど...
DY
そうだよね.ここからは研修医としての心構えだからもう少し突っ込んで話をするよ

研修医(医師)としての心得

うさぎ研修医
結構上の先生によってやり方違いますよね?
DY
そう,ここは言語化がなかなかしにくいところ.
(むしろあまり触れられないところだから)
あえて書かせてもらいます!

これは上級医・指導医によっても考えが変わるところではあります.

しかし,なかなか言語化される領域ではないため,ここで一般化すると以下のようなものになります.

患者さんへの対応は真摯に!

言わずもがなことですが,あえて一番最初に.

診察・診療は卒業するまでに実習でするとは思いますが,研修医になって学生と異なることは,

患者さんは「研修医」ではなく「医師」としての対応を求めている

ということです.

昨今のリスク管理の問題で,名札などの職位の記載が「研修医 ◯◯」から「医師 ◯◯」などという表記になっています.

(平たくいうと,研修医と掲げ患者さんから医者変えてくれ!など「職位」を見て判断されることがあるからです)

見た目や対応の方法で研修医だろうな,ということは察しても,医師免許を有している「医師」である以上患者さんは研修医であろうと医師としての対応を求めます.

具体的には,救急外来や病棟などでの,「病状説明」の時です.

”よくある例”

救急外来で発熱で来た患者さん

うさぎ研修医
診察してきました!
〜中略〜
こんな方です!
DY
なるほど,病歴と診察からは風邪(急性上気道炎疑い)として家で様子をみてもらおうか...

ー診察室でー

患者さん
先生,熱はどうしてなのでしょうか?
うさぎ研修医
おそらく風邪だと思います..今日はお薬を出すので自宅で様子を見ていただければ良いと思います

というやりとりです.自分の対応方法は覚えていないでしょうが,上級医として研修医の説明内容でよく聞くフレーズが入っています.

それは「思います」という表現

字面ではなかなか伝わりませんが,ほとんどの研修医が「自信なさそうに」「思います」という表現をします.

患者さんはあなたのことを「医師」と思って受診しているにかかわらず,自信のなさそうに「◯◯だと思います...」と言われると不安になることがあります.

私も研修医の時はそうでしたし,そう「思う」気持ちと自信のなさは良くわかります.

ただし,現場ではそうはいきません.私たちは患者さんを不安にさせてはいけないのです.

これを払拭するために,2つの心得をお教えしましょう

  • 「思います」ではなく,「考えられます」という言い換え.そして言い切る.
  • 「自信」を持って対応を

具体的に,

  • 「思います」ではなく,「考えられます」という言い換え.そして言い切る.

これは非常に有効です.すぐできます.

”よくある例を良くすると”

ー診察室でー

患者さん
先生,熱はどうしてなのでしょうか?
うさぎ研修医
おそらく風邪だと考えられます.今日はお薬を出すので,自宅で様子を見てください.

どうですか?変換しただけで,字面だけでも少し自信がついたように見えます.

日本語の問題ですが,「思い」は感情的であり,「考え」は理論的です(意味の問題など本質からは外れますが).

もちろん自分の中では,(風邪だと思うけどなあ...上の先生と相談してそう言うように言われてるし...)と言う「思い」ですが,

そのまま表出せず,患者さんの前では一人の医師として,安心を与えられるように心がけましょう.

  • 「自信」を持って対応を

こればかりは一朝一夕では身につきません.最初から自信満々に大間違いされると,後で尻拭いをする上級医が大変です.

数多くの症例を経験し,自分の言葉で説明ができるようになってこれば,自然に身についてくると思います.

いくら学生時代優秀でも,最初から自信を持って診療ができる研修医はいません.

ただ,繰り返しますが患者さんに不安を与えないよう,上の”よくある例を良くすると”のように対応するだけでも自信があるように見えます.

その上で,患者さんからの突発的な質問の対応など困ることがあると思います.

その場で答えられない内容は,「その件については他の医師と確認させて頂くので少しお待ちください」と報告・相談するようにしましょう.

この状況は初期研修医のよくある,「夜間の救急外来などで1人で患者対応をしている場合,上級医が忙しく1人で説明しなければならない場合」から考えています.

最初は上級医が一緒に病状説明に入ってくれたり,上級医の病状説明を横で聞く,ということから始まることが多いですが,

独り立ちし始めた研修医や,病状説明に入ってくれない上級医がいる場合にこの心得を胸に乗り切ってください!

報告・連絡・相談は端的に,「型」を守って

どの職業でもそうですが,入職後に現場に出てからは上司への報告が多数あります.

そのような中で,「上手に」報告する方法をお教えします.

キーワードは,「SBAR」です.

知っている人は知っている,看護の領域ではまず教えられる部分です(医師の研修にも最近組み込まれています).

SBARは以下の略語です.

S:Situation(状況)

B:Background(背景)

A:Assessment(評価)

R:Request(提案)

この順番に報告すると,相手に伝わりやすいと言われています.

具体的に意識していない報告と,意識している報告をあげてみましょう

(救急外来で診察した患者の相談について)

”SBARを意識していないよくある報告”
研修医のDYです.さっき来たA(患者)さんの件で相談です.

発熱で受診され,右足が痛いと言っていましたが診察しても熱源がはっきりしませんでした.
元々脳梗塞の既往があり右足は動かしにくいそうです.
他にも高血圧があり内服薬は抗凝固薬と降圧薬がありますが,降圧薬はご自身の判断で内服していなかったみたいです.
とりあえず血液検査をしようと思うのですが,診察でもはっきりしなくて,どうしたら良いですか?

 

”SBARを意識している良い報告”
研修医のDYです.さっき来たAさんの件で,血液検査の必要性と一緒に診察をお願いしたいです.(S)
60歳の男性で,元々高血圧と脳梗塞の既往があり右足が動かしにくいそうです.(B)
本日は発熱で来院され,右足が痛いと言っていましたが診察でははっきりしませんでした.
発熱の原因がわからず,足の痛みとの関連性についてもあまり思いつかず,血液検査をしようと思います.(ここまでA)
先生には,次に一緒に診察をお願いしたいのと,血液検査が必要かどうか相談させてください.(R)
どうでしょう?

意識していない例と意識している例を2つ挙げてみました.

医学的なことはさておき,重要なのは報告の順番話す内容であることはわかっていただけたと思います.

いざ話をするときには緊張したり内容を覚えていなかったりするので,最初は少し文章を作っても良いくらいです.

(救急外来など時間がない場合は,上級医へぶっつけ本番を繰り返すことで良くなっていきます)

聞いている上級医の側として,要領を得ない報告というのはイライラしてしまうもの.

ただでさえ現場に出て緊張することが多いので,報告はコンパクトにできるよう心がけましょう!

(ちなみに医療以外のどのような報告でもSBARは使えます)

考えることをやめない

なかなか抽象的な話ですが,これは研修医に限らない話です.

「なぜ?」と思う心がなくなってしまうと,医学そのものへの興味がなくなってしまいます.

具体的には,

うさぎ研修医
(何が原因で患者さんはこのような症状を訴えているのだろう?)
うさぎ研修医
(この血液検査の結果は何を意味しているのだろう?)
うさぎ研修医
(画像所見でなぜこのように見えるのだろう?)

などです.

「なぜ?」という思いがなければ,「勉強する気力」や「向上心」が薄れてしまいます.

私の研修医時代に師事した指導医の先生は,「考えることをやめれば医師として伸びなくなる」とおっしゃっていました.

最初はなんのことかわからず,(ふ〜ん...)くらいにしか思っていませんでしたが,

内科医・救急医として経験が増えてくると,同じ作業が増えてくるので思考停止することが増えてきます.

(ある意味,同じ作業を短時間ですることは重要であるため,このような傾向になること自体が悪いことではありません)

研修医の間はわからないことだらけなので,なぜと思う気持ちが自然に出て調べていることが習慣化されますが,

人によっては研修医の間から思考停止し,(発熱→解熱薬)というパターン化された診療しかできなくなります.

せっかく医師としていろんな意味で人を癒すことができるようになったのですから,この部分はぜひ心に留めておてもらえると嬉しいです!

勉強時間がない!上手に時間を使うには?

うさぎ研修医
DY先生!毎日忙しくて勉強する時間がありません!!!
DY
今は忙しいから時間がないよね...上手な時間の使い方は,
①日々の診療業務の時間を短くする
②余った時間のうち,無駄な時間を削る
これで勉強する時間は増えるはず!

研修医になって忙しくなり,「自分の時間がない!」であったり「勉強時間が確保できない!」という声をよく聞きます.

効率よく時間を使うために,この内容で皆さんの日々の時間を見直すきっかけとなればと思います.

ただし,最初から裏技的なものはなく.

「すべての作業は慣れるまで時間がかかるため,慣れてから自由時間をうまく使えるかで効率が変わる」

ということを申し上げておきます(自明ですが).

啓発本など様々ありますが,私はそのようなものを読みません.たくさんの研修医を見てきて,自分の研修医時代を振り返っています.

  • 時間は有限であり,自分の中で「必要なこと」以外には時間をかけない

これは当たり前のことですが,人によって「必要である作業」は異なります(プライベートの時間も含む).

SNSを見続けたり,漫画を読んだり,YouTubeをみたり,その人にとって「必要」なことであればその時間を割くことは有用だと思います.

特に,オンとオフの切り替えのための作業や自分の時間でストレスを発散する作業は特に重要です.

ただし,自問自答して「この作業って今必要?」と思ったときにはその作業をするかどうか見直す必要がありますね.

  • 勤務時間内の作業は「診療」「事務」「勉強」「休憩などその他プライベート」に分けて考える

勤務時間を10とすると,研修医となった最初の1ヶ月は,診療が9・休憩などが1となる人が多いです.

これを配分していきます.

診療に9かかるうち,具体的な診療内容を挙げましょう.

①患者さんを診察している時間

②病状説明の時間

③検査など付き添いの時間

④カルテを書く時間

などでしょうか.

ここからどれを短くできるか?ということを考えます.

②と③は難しそうです.ただし毎日あるわけではないと思います.

①を短くするには慣れとテクニックですが,初学者である研修医が診察の時間を削るのは研修の意味がないため,こちらはお勧めしません.

④はどうですか?カルテを書く時間やまとめる時間というのは最初に短くできます.

慣れるまで,どのように書くのか?などと悩む部分がたくさんあると思いますが,最初は仕方ないと割り切りたくさんカルテを書き,上級医の確認をしましょう.

数を重ねればブラッシュアップされるので,効率よくカルテが書けるようになります.

(入院時サマリーの書き方については記事作成中です,お待ちください)

このように,診療の時間を9→7→5くらいまで減らせれば,残りをどのように配分するかです.事務作業は1もなく0.5くらいで済むでしょう.

休憩時間を削ってまで勉強しろ!とまでは言えませんが,残りの時間をどのようにするかはあなた次第です.

大事なのは「休憩」⇄「勉強」の切り替えがうまくできるかどうかです(学生時代もそうでしたね).

  • 具体的に”それって必要?”という時間

勤務時間以外に勉強はしたくない!という人もいるかと思います.でも,勉強する時間がない!という人は,勤務時間内の無駄な時間を割く必要があります.

研修医室で見る無駄な時間をここでいくつか挙げます.

・他の研修医とダラダラ話をする

(その診療科の研修ってどうなの?から当直中に見た患者の話など,他の研修医の経験は自分の経験にはなりませんよ

・他の患者のカルテを見続ける

カルテを見ても自分の経験値にはなりません.せいぜい上級医のカルテを参考にする程度に留めましょう)

・病院にいて業務が終わりながら,動画をみたり漫画を読んだり休んでいる

(自分がリラックスできる環境で休みましょう)

いかがですか?日々の業務内容・時間を見直すことで自分の時間は確保できます.

効率よく診療し,効率よく勉強するよう時間の使い方を見直してみましょう!

うさぎ研修医
なるほど...
言われれば当たり前のことばかりですね.
できることを少しずつやってみます!
DY
ちょっと長かったけど,少しずつできることをコツコツやっていこう!
お疲れ様でした.

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