保健所のコロナフォローセンターで2日間働いてみた【医師アルバイト体験談】

今回は保健所でアルバイトをしたので,レビューしてみようと思います.

DY
保健所の医師は大変でした….

アルバイトをおすすめする理由はこちらで書いています.

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そもそも保健所での仕事とは

公衆衛生の復習ではないですが,保健所での医師の役目とは以下のものがあります.

DY
普段からたくさんの業務をされています

新型コロナウイルスが流行し,特に医療界は一変しました.

コロナ流行時期は「感染症の業務」に多大な負荷がかかり,常駐している保健所医師のみでは対応が難しくなりました.

(しかも,他の業務を滞らせるわけにはいきません)

そこで,行政から人材派遣会社に依頼があり,保健所の医師を応援すべく募集がかかったのです

保健所でコロナに関する仕事

保健所でのコロナの業務は以下のものがあります.

※今回はDYが勤務してきた政令指定都市の保健所の流れです.

なるべくわかりやすく解説していますが,詳細は異なる場合があるのでご了承を.

コロナ患者対応の流れ【1】ー患者の把握

※1 無症状なのに抗原検査のみで診断されている場合は,受理せず医療機関に問い合わせたりします

※2 年齢や発生届の内容でスクリーニングします.

コロナ患者対応の流れ【2】ー療養先を決める

コロナ患者対応の流れ【3】ー療養後のフォロー

コロナ患者対応の流れ【4】ー行政検査の結果報告

実は,【1】①の時点で,初手が違うことがあります.

それは”行政検査”で陽性になった場合です.

行政検査は濃厚接触者などに対して「行政」が行う検査で,検査結果は行政が伝えます.

つまり,保健所が検査結果を伝え,②の順にフォローしていくこともあります.

DY
それと別にも
まだまだあります

コロナ患者以外の対応【1】ー濃厚接触者関連

感染者がいれば,濃厚接触者もいることがあります.

濃厚接触者と直接やりとりはしませんが,ある程度の洗い出し(家族・友人など)を行います.

対象者がいれば,行政検査(PCR検査)の案内が必要であるため,行政区から案内がされます.

コロナ患者以外の対応【2】ークラスター評価

クラスターに関わるか評価します.

施設内で数名感染者が出るなどの事案が発生すれば,感染対策の指導や,濃厚接触者への行政検査の案内などを行います

クラスター班が別にいるため,調査が入ります.

コロナ患者以外の対応【3】ー感染対策の助言

高齢者施設や学校など,どのような感染対策を行うかの問い合わせへの回答を行います.

うさぎ先生
患者さんだけ対応すれば良いわけじゃないんですね…

実際の業務内容

DYは上のの部分を医師として行います.

このようなガイドを渡されて,対応を説明されました.

DY
重症化する可能性がある患者に電話をかけ,
この人が入院が必要かどうか,医師として判断する
というのが仕事内容です
聴取する内容①
<固有情報>
・氏名
・年齢性別
・住所
・家族構成
(・勤務先,家族が学校に通っていればその学校)
聴取する内容②
<医学的な情報>
・身長体重
・発症から検査までの病歴,接触歴
・現在の症状
・基礎疾患(呼吸器・心疾患の併存の有無や,悪性腫瘍の治療があるか)
・療養先の希望

聴取する内容③
<入院が必要であれば,追加で聴取>
・要介護度
・内服薬
・急変時の対応について

以上を聞いて1セットです.

その上で,療養先を提案し,本人ないし家族と相談し決定します.

決定した後は④へ行くので,別の担当部署に回します.

ただし,医師のみが病歴聴取するのは人手が足らないため,病歴聴取は看護師も行います.

全ての情報を聞いた看護師からコンサルトを受け,入院したほうが良いか,自宅/宿泊施設療養が可能か医師として判断します.

 

自宅/宿泊療養や入院の基準は?
ありません.
我々との電話口で決めます.
医学的な適応はDYでも判断できますが,社会的な事情が絡んでくるため,本人や周囲の人たちと相談して決めることが多数です.
DY
例えば,
①若年本人は基礎疾患がないが,同居のパートナーが重症心疾患を有している
②認知症で一人暮らし,宿泊療養は自分で連絡が取れる必要があるけど
③高齢夫婦で陽性,基礎疾患はないが,ペットを飼っている→みなさんどうしますか?
なんとなく想像つくと思いますが,DYが本人たちと相談した結果は,
①本人が宿泊療養を希望され,そちらへ.
②自宅療養・宿泊療養適応がなく,入院調整へ
③本人たちの強い希望があり,自宅療養で(体調変化について厳重にお伝え)
となりました.
うさぎ先生
病院の救急対応と
似ているような似ていないような…
”重症化しうる方”として電話をかける基準はどのように設定されているの?
年齢や発生届の内容などから判断します.
元々全例でしたが,全例把握が不可能になった場合は,上記のようなスクリーニングがかけられていました.
電話の基準ももちろん明確なものはなく,主に保健所の常勤の先生が決めていました.
本人家族の療養の希望はとおるの?

DYが勤務した時は,いわゆる『第4波の真っ只中』でしたので,

宿泊療養はまだ希望が通る.
入院は緊急を要しても当日中に入院できるかわからない.緊急性がなければ翌日以降に回される.

という状態でした.

うさぎ先生
今もかもしれませんが,
医療崩壊と言われていましたもんね…

 

どんな仕事内容?〜1日を振り返る〜

勤務時間:9-13時×2日

【1日目】

08:50  保健所に到着,担当者にご挨拶

保健所の常勤医師に挨拶し,勤務内容について説明

マニュアルを渡されます

09:20 勤務開始

まずは慣れている看護師さんについて,どの内容をどんなふうに聴取しているか参考にさせてもらいます

全て聞いて方針を決めた後,コピーしてどの部署に持っていくかも教えてもらいます.

09:45 実際に電話開始

出勤日ではない常勤の先生の席をお借りし,

携帯電話と発生届を渡され,1件目から電話をしていきます.

1件あたり20-30分かけて電話していきます.

DY
みなさん色々な事情を抱えておられました…泣

少しトイレ休憩にいきながら,お茶片手に電話しまくります.

わからないことがあれば常勤の先生方(勤務中は5名おられました)に聞きます.

13:00 業務終了

保健所の先生方に挨拶し,1日目業務終了です.

【2日目】

08:50  保健所に到着

09:00 勤務開始

2日目は流れのまま勤務開始し,電話していきます.

途中看護師さんからのコンサルト(療養方針の相談)が入りつつ,DYも電話をかけます.

DY
ただひたすら電話します

13:00 勤務終了

業務中困ったこと

業務内容に対して,というより「えっ?」となるような困ったことがありました.

まずは一つ目

発生届の記入がいい加減

検査のみ行っている医療機関があります.

いわゆる診察をしない?検査専門のクリニックです.

そのような医療機関から送られてくる発生届は,まさかの

”名前(カタカナ)””電話番号””診断検査方法”しか書かれていないんですよね.

DY
最悪だったのは,以下の例でした

①”この電話は使用されていません”と言われる
②発生届を出したクリニックにかける
③クリニックの医師に確認すると,
「本人が自分で書いている問診票ですので,これ以上の情報はありません」
④終了(フォローできず)

いやいや…
もう少し病歴聞いてよ!!症状書いてよ!!
住所ないとフォローする管轄が変わるじゃない!!
という言葉を堪え,常勤の先生に対応を依頼しました.
うさぎ先生
現場の先生も忙しいし,
送りっぱなしの書類だろうけど,
送られた後のことを考えないと…

もう一つは,システム面です.仕方ないと思うのですが..

全て紙運用

DYが上で紹介した業務内容は,全て紙で記載し,コピーして他の部署に回します.
(おそらく後で事務方がパソコン入力しているのでしょう)

何が不便かというと,他の感染事例との紐付けがその場で一切できないことです.

実際に,

常勤先生1
あの医療機関から報告のあった感染者って
前報告あった人と同じ高齢者施設じゃない?
常勤先生2
そうだったと思う…
(山積みのシートから)
そうそう!
◯日前に発生届出てた!

というやりとりもされていました.

クラスター発生など当該施設が把握していることもあるでしょうけど,
一般企業や利用した店舗などは把握できていなければ知らず知らず感染者が増えていることもあるかもしれません.
DY
現場では紙の方が早いでしょうけど,システム面が改善し
紐付けや統計を取りやすくなれれば良いなと願いました
困ったことに現場の先生方ではどうしようもできないんですよね…
(もちろんそうですよね〜 という感じでした)
個人としては淡々と電話するだけの業務とはいえ,なかなか歯痒い思いをしました.

 

(ちなみに)今回働いた施設について

(画像はイメージです)

基本設備

規模:保健所

専門科:なし

待機室:なし

WiFi:なし

食事:なし

必須手技:なし

うさぎ先生
まあ特別なことはないよね

DYの評価(保健所フォローセンター)お給料も

給料:

時給は9000円でした.半日×2で72000円です.

電話のみで,診療せずこの時給であればアリかと思いました.

やりがい:

これはなんともいえませんでした.

保健所の先生方の勤務の大変さからすると,やりがいどうこうレベルではなく災害対応の状態でした.

診療ベースのDYからすると,電話のみは少し辛かったので★3としました.

しかし,

DY
勤務終了時には,ものすごく感謝されました
(それほど人手不足で,先生方も含めみなさん疲弊しきっていました)
少しでもお手伝いできたならこちらとしても良かったと思えるのですが…

総合評価:

やりがい×給料として,総合評価はこんな感じです.

電話対応が得意であれば,もう少しやりがいを持ってできるかもしれませんね.

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まとめ・感想

保健所コロナフォローセンターで働いてみたレビューしてみました.

医師の仕事は様々でありますが,その中で保健所の先生方の仕事に少し携わることができました.

ただこの一言に尽きます.

保健所の先生方は大変!
DY
行政と連携するときには
(当たり前ですが)
丁寧な対応を!
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