どんな仕事内容か,お給料どれくらいなのかぶっちゃけます.
これから色々な進路を考えている皆様へ,訪問診療医がどんな仕事をしているのか紹介します.
医師として患者さんとその家族にめちゃめちゃ近い診療スタイル
働き方としてはワークライフバランス重視可能です
まず,訪問診療って?
家に行って診療するんじゃないの?
大きく分けて2つの訪問の仕方があるんだ
この仕組みを簡単に説明します.
これを知っていただければ,仕事内容がよりわかりやすくなります.
訪問診療の定義
医療機関への通院が困難になった方に対して,医師が自宅・施設などに訪問して行う医療サービス
のことです.
訪問診療には2種類あります
定期訪問
定期的(2週間に1回など)・計画的に訪問し,日々の健康管理を行う.
具体的には,診察・検査(血液検査など)・投薬・処置(床ずれや尿道カテーテル入れ替えなど)を行います.
往診
定期訪問と別に,有事・緊急の際に,本人や家族の依頼によって訪問し,診察や検査などを行う.
この2つが原則です.
どんな患者さんがいるの?
定義通り,医療機関への通院が困難な方が対象であり,
- 寝たきり
- 認知症
- 何らかの悪性腫瘍で,積極的治療は行わない
- 心不全や慢性呼吸器疾患の終末期
といった,悪性腫瘍や下降期慢性疾患の方々が主です.
ほとんどの方・家族は
「病院ではなく,お家でできる範囲で”しんどくないように”過ごしたい」
とおっしゃいます.
過ごしてもらえるようお手伝いすることが使命だと思っています
訪問診療のイメージ
業界内では,「バリバリ働くことから遠のいた人」や「慢性疾患の管理のみ」というイメージが持たれることが多いです.
しかし,以下にも述べますが,DYが勤務しているクリニックは少なくとも「超慢性期」から「急性期」までの管理をしています.
DYの勤務している施設について
※施設によって勤務形態は変わります.さまざまなスタイルがあるため,参考程度にご覧ください.
所属しているクリニックの方針
訪問診療を主にしているクリニックで,院長とDYが常勤医,他は非常勤・アルバイトの医師がいます.
クリニックとしては24時間対応をしており,有事・緊急の際には夜中でも訪問し対応します.
さらに,原則「自分が過ごしたいところでできる範囲で行うことを希望されている方」へ診療しているため,
必要性があり,かつよほどの希望がない限り病院へは搬送しません.
自宅や施設でできる範囲の治療を行い,対応が難しくなり本人家族の了承が得られれば苦痛などの緩和を主軸に切り替えます.
そのため,クリニックとして,
「本人と家族の希望に最大限応え,さらに地域の救急医療に負担をかけないようにする」
ことを指針としています.
どのように勤務を決めているの?
週5日間の勤務日(勤務時間は9時〜18時)のうち,
3日を「定期訪問日」として固定の曜日
2日を「往診待機日」
に分けます.
固定の曜日が週3日あり,それらの勤務は原則必須(祝日など休みに関わらず)です.
その上で,残り2日分を往診待機日として,クリニックで待機します.
(主治医として持っている患者の状態を把握・予習などをします)
残りは休みです(祝日など,法定休日に出勤すると,追加で休みがもらえます).
文章ではイメージしにくいため,ある月を例にすると,
このような形です.
※29日が祝日で勤務がありますが,その分別の日におやすみをもらえます(この月は4月6日が休日)
夜間については,院長と非常勤の医師が交代制で待機しています.
(DYは夜勤原則ありません,希望あれば入ります)
この働き方の魅力は,
- オンとオフがはっきりしている(時間外に呼ばれることはない)
- 当直がない
- 休みが平日に入れられる(しかも思い通りに3連休が作れる)
訪問診療医の1日
定期訪問の日
9:00 出勤,今日訪問する患者で状態変化がなかったか確認
9:15 準備して出発
9:30 1件目のお宅へ
定期訪問で医師ができることは健康管理くらいです.
投薬の変更を行うかどうか,新たな症状が出ていないかという医学的な管理と,
このような医療・介護サービスを導入したらより本人/家族の調子が上向きになるかもしれない,などの医療的な管理
を行います.
世間話をしながら,「変わりないですかねー」と言いながら診療しています.
安定している方は時間がかかりませんし,病状が進行していれば薬剤の変更や家族への病状説明などを行います.
(後で家族に電話連絡することもあります)
午前中は大体10-15件ほど訪問をします.
12:00 お昼ご飯(ほぼ外食)
病院で勤務していてずっと病院で昼食をとっていましたが,訪問診療を始めて昼食のスタイルが変わりました.
営業のサラリーマンのように?,外食することが増えました.
良い意味で新鮮ですが,悪い意味ではお金がかかることと,自分の健康管理により気をつけなければと思うようになりました.
13:00 午後の訪問開始
午後も10-15件ほど訪問します.
17:30 クリニックへ戻り,カルテ整理
18:00 終業
定期訪問の日このような流れです.
往診待機の日
9:00 出勤,往診依頼用の携帯をもらう
12:00 お昼ご飯(クリニックでお弁当)
18:00 終業
状態が悪くこまめに訪問が必要な方のところへ訪問し細かく管理をすることもあります.
自分の次回訪問する方の予習をしたり,クリニック内で方針の相談をしたりします.
往診として呼ばれる時は,
・熱が出た
・息が苦しそう
・転倒し体を痛がっている
・呼吸が止まった
などさまざまです.
日によって5件ほど呼ばれることもあれば,全く電話が鳴らない時もあります.
クリニックの周りでランニングしてるよ
(もちろん院長の許可はもらっていますし,往診依頼があればすぐに出発します)
メリハリをつけて体を動かすことで自分の体調が整う感じがしており,かつわざわざジムとかに行かず済むので助かっています.
訪問診療医の給料
さて,このような勤務でどれくらい給料がもらえるのか?というところですが,
DYが所属しているクリニックは”インセンティブ制”となっております.
ですので,月給(固定給)25万円がベースにあり,
インセンティブとして,
- 患者1人見れば約4000-5000円
- 往診待機すると1時間あたり4000-5000円
(細かい決まりがあります)
が設定されており,だいたい月収130万円ほどとなります.
合わせて年収は1500万円前後となっています.
最高月収をもらった月の明細
内容 | 金額 | 説明 |
基本給 | 250,000 | 説明不要ですね |
時間外賃金 | 150,000 | 夜勤や日々の残業分です(残業80時間ほど) |
定期訪問分 | 670,000 | 定期訪問で診察した患者数に対するインセンティブ |
往診対応分 | 80,000 | 往診で診察した患者数に対するインセンティブ |
往診待機分 | 960,000 | 往診”待機”した時間に対するインセンティブ |
計 | 2,110,000 | ※他もありますが,おおよそこれくらいでした |
この仕組みだと,
という仕組みができ双方メリットがあります.
他にも,年棒制+インセンティブのシステムであったり月給固定制であったり様々です.
訪問診療医になるには,向いている人
訪問診療医になるには,特別なスキルや専門医資格などは不要です.
つまり,経験不問で初期研修さえ修了していればどんな方でもなれます.
DYも病院勤務医として総合内科・救急医として勤務していましたが,今は訪問診療医として働いています.
これは一概に言えませんが,患者さんと家族・周りの人に寄り添って一緒に歩んでいくことができる人ではないでしょうか.
病院で勤務医をしているより,患者さんの”生活”と”人となり”がよく見えます.
その生活に入り込んで,医師として何ができるのか?ということを考えられる人は向いているでしょう.
また,病気に対しての治療というよりその「人」に対して(治療を含めて)何ができるかということの方が強いです.
これはどの科のどの医師でも前提としてあるものなのですが,
病院で働いていると,より専門性を極めていると,
「人」よりも「病気」に目が行きがち
なのですが,訪問診療をやっているとそうでないことが多数あります.
最後に,病院勤務医から訪問診療医になって
何か変わったことはありますか?
7年間病院で勤務医として働き,訪問診療に方向転換した率直な感想は,
- ずっと病院の中で働いてたけど,外に出るって気持ちいいなー
- 訪問するだけで,顔を見せるだけでこんなに感謝される職業ってなかなかないなあ
- 平日の昼に外食できるなんて思ってもいなかった
- オンオフはっきりしているからいきなり呼び出される心配もない!
- めっちゃ給料上がった
に尽きます.ずっと病院にいたからこそないものねだりのようなことを思っていました.
ただ,訪問診療を続けているとやはり心配や不安になることもあります.
- 外に出るけど夏は暑いし冬は寒い...(日焼けする)
- 今まで待機時間だったのが車での移動時間になってなかなか作業ができないな…
- 外食ばっかりで食費と健康に気を遣えない…
良い感想の裏に不安が生じるのは当たり前ですね.
DYはやりがいもあり,自分のプライベートも含めた働き方にマッチしているため,この仕事を続けようと思います.